レンタカーのお気に入りはここ

ともあれ、ABSはいざというときに生命を守ってくれる保険であることは間違いない。
国産車のなかにはABSが標準装備でない安いクルマが何台かあるが、ABSだけは絶対にくろさわもとはるつけたほうがいい。 自分が黒沢元治とか、A・S、ミハエル・シューマッハーのような超一流ドライバーだと思えない人は、まずABSつきを買うことだ。
もちろん私もそうは思っていないから、ABSを重視する。 あの手の超一流のドライバーは、それこそ神業のようなブレーキングをする。
たとえば黒沢元治さんなど、雨が降ってピショビショなところでも、コーナリング中でも、ABSのついていないクルマで平気でフルブレーキングする。 それでちゃんと止まるのだから不思議だ。
それでも止まらないとなると、クルマをクルリとまわして、お尻からぶつけ、自分のダメージを減らすことぐらい朝飯前でできる連中である。 この程度のことが平気でやれる自信がないかぎり、ぜひともABSっきのクルマに乗ってください。
前にも書いたように、ABSのすごいところはブレーキを踏みながらハンドルが切れるということだ。 ABSが発明されるまで、こういうことは自動車史上、ごく一部の特殊なレ1シングドライバー以外にはできなかったことなのである。
昔はコ1ナリングの最中にはブレーキは御法度で、どうしてもかけなければというときは、ハンドルをすこし直進方向に戻してブレーキ、ブレーキを離して、またハンドルを切ってということをやったものであった。 しかし、いまではコーナリングのさいのブレーキも、ABSのおかげであまり神経をつかわずに思い切って踏んでも大丈夫になった。

こいつはほんとうに素晴らしいことだ。 とはいえABSといえど、なんでも可能にしてくれる完壁なブレーキというわけではない。
実をいえば、ABSでフルブレーキングした場合と、ABSなしでフルブレーキングした場合では、制動距離はABSなしのほうが短いのである。 なんとなれば、ABSはブレーキをゆるめている空走の時聞がかならずあるからだ。
ここのところを勘違いしてはならない。 ABSはタイヤを止めるブレーキの効きが強いというのではなく、タイヤをロックさせないことで障害物を避けることができたり、スケーティングを防止できるというシステムなのだ。
たとえば雪道やアイスパーンで、ABSを過信して急ブレーキを踏んだら、クルマはおいそれと止まってくれない。 ABSはタイヤをロックさせないように作動するから、いくらブレーキを踏んでも、タイヤは断続的に回転しながらクルマはスルスルスルスルツと進んでしハンドルを切らなければそのままド1ンである。
ま〉フ。 ABSはスイッチを押すように、ただペタンとブレーキを踏めばそれでグッとクルマが止まってくれる魔法のブレーキではないのだ。
もうひとつABSで注意しなければならないのは、二チャンネル式か、三チャンネル式以かつてABSが登場した当初は、ブレーキの制御を前輪と後輪にわけで上かということだ。 おこなう二チャンネル式が主流だった。
しかし、最新のABSは四輪すべてを、それぞれ独立して制御する四チャンネル式である(三チャンネル式は後二輪を一緒に制御、前二輪の左右を別々に制御する)。 四チャンネル式のABSは、各車輪の回転差を検出し、そこからコンピュータが演算して、四つの車輪のブレーキ量をそれぞれ配分する。
ブレーキ時の安定性は、四チャンネル、三チャンネル式のほうが二チャンネル式より、はるかに高く、ハイスピードコーナリング中のブレーキングも安心しておこなえる。 逆にいえば、ニチャンネル式のABSはその安定度が低いわけで、初期のABS車に乗っているドライバーは、あまりABSを過信せず、そこのところを注意しておいたほうがいい。
パニックブレーキに戻ろう。 パニックブレーキのさいは、ABSがついていようが、ついていまいが、とにかく床も踏み抜けとばかりに思い切りド1ンとブレーキを踏むことである。
教習所の教えているポンピングなんてことは絶対やめたほうがいい。 これが乾いている路面なら、ABSよりABSなしのほうがかえってブレーキはよく効くだろう。

しかし、雨が降ハンドルが効いて障害物を避けられるだっているようなときはたとえ制動距離は伸びても、ABSのほうが有利なはずだ。 いずれにせよパニックブレーキで大事なのはぶつからないということではなく、ぶつかる前の速度をできるかぎり下げるということだ。
衝突時のエネルギーは衝突速度を5M/=落とすだけでずっと少なくなる。 こいつは実験データが明白に示していることだ。
100km/hで走るクルマがそのままノンブレーキでドーンといけば、まずドライバーと乗員はオダプツだ。 しかし、踏めるだけブレーキを踏むと、その100加/=が50km/hにも30km/hにも落ちてくれる。
下がればしめたもので、生還できる可能性は100 km/hのときよりも飛躍的に高くなるのである。 フェードさせてしまう運転のしかたというものがある前にも書いたが、クルマのブレーキで、歴史的に大きな改良は三つある。
ひとつは油圧でブレーキを作動させるオイルブレーキ、つぎはディスクブレーキ、そして前に触れたABSである。 実をいうとABSは、鉄道技術としても開発されており、新幹線や特急電車などに使われている。
たしかによく考えてみれば、電車は鉄の車輪とレールが狭い面で接触しているわけで、この車輪をフル制動したらそのままツーッと滑っていってしまっておかしくない。 私は若いころ、国産の初期のオイルブレーキのクルマに乗っていたが、これはもう悲しくクルマは一九五二年型のダットサン、こいつに当時、国産最新技術のオイルブレーキがついていた。

しかし、当時の国産車の技術といったら情けないもので、クルマ自体、せいぜい最高速度30km/hぐらいの性能だからいいものの、まったく止まってくれなかった。 砂利の浮いた道でフルブレーキをかけても、タイヤがまったくロックしないといえば、その効き目のほどがわかってもらえょうか。
当時、未舗装の国道で30km/hぐらいからフルゃブレーキをかけると、おそらく完全に止まるまで七0メートルぐらいはかかったろう。 いまのクルマは100M/=から停止するまで、だいたい四六、七メートル以内で止まる。
短いものなら四五メートルぐらい、長いものでも五0メートルぐらいだろう。 ブレーキもずいぶん進歩したものである。
国産車でいま一般的となっているディスクブレーキが登場しはじめたのは、いまから二O年ぐらい前のことだ。 ディスク、ブレーキが採用されるようになったのは、それまでのドラムプレーキより熱の放散効率がよいからである。
物理学的にいうと、ブレーキはクルマの運動エネルギーを摩擦を介して熱エネルギーに変換し、空気中に放出することでクルマを止めるシステムである。 したがって、この熱の放出がうまくいかないとブレーキパッドが過熱し、熱の飽和量を超えて、摩擦力がなくなり、ブレーキは効かないことになる。
こいつをフェードという。 いったんブレーキがフェードすると、踏んでも踏んでもツルツルで、ブレーキは効いてくれない。
こういうときはクルマを止めて冷やしてやるしかない。


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